研究概要 |
北海道産の白亜紀石灰質ノジュール、及び、オーストラリア、クイーンズランド州産のペルム紀硅化泥炭から、多数の菌類化石を見いだすことができた。このうち、北海道産のものについては、不完全菌類の3新属3新種、Archephoma cycadeoidellae, Menisicoideisporites cretacea,Palaeodiplodites yezoensisとしてInternational Journal of Plant Research に記載発表した。さらに、形態の異なるいくつかの菌類化石を見いだしており、今後も研究を継続する。保存良好な中生代の菌類化石を今回のようにまとめて記載した例はこれまで無く、菌類化石研究に大きく貢献した。 ペルム紀の硅化泥炭中には植物破片が多く含まれるが、その植物組織や周囲の泥炭基質中に子嚢菌類や水力ビ類を発見した。もとの硅化泥炭の保存があまり良好とはいえなかったために、正式な記載を行うにはさらに資料の検討が必要である。ペルム紀の菌類は木材腐朽菌などが南極から記載されているが、研究は少ないので、報告を続ける予定である。 北海道から記載した菌類は腐生性とみられるものがほとんどであった。しかし、Archephomaに近縁な現生属Phomaには病原性のあるものがあり、白亜紀以降に被子植物主体の植生が確立してゆく中で、そのような種も出現したはずである。特に、種特異性のあるものは、分化した時代が新しいはずで、今後このような種を含めた現生種の分子系統が明らかにされれば、化石種の評価もより深まることが期待される。 化石菌類の研究は記載自体がすくないために、今回の研究成果も含めて、当初期待した生態学的な論議を行うのに充分な情報が得られたとはいえない。
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