研究計画に従い、本年度は次のような研究を実施し成果を得た。 1. フェノロサの能研究とイェーツの能様式の作品の本文を入手し、関連文献の収集を終わった。上記2著作の音楽面での特徴について、国立能楽堂の奥山けい子氏と読み合わせを行い、問題点の抽出作業に入っている。 2. ロンドンでの伊藤道郎の活動について、伊藤道郎の弟千田是也の資料を中心に資料収集を行った。またイギリスのホルスト財団と情報交換を行い、 「日本組曲」の成立事情についてイギリス側に伝えられている情報の確認作業を行っている。それと並行して、ホルストの「日本組曲」の自筆スケッチ、2台ピアノ用楽譜、自筆スコアのコピーをイギリスより入手し、相互比較を試みている。この結果については次回の日本音楽学会全国大会(1999年11月)で報告する予定である。 3. 1918/1919年の山田耕筰のアメリカ旅行について、日本側に残る資料を調査し、その結果を第49回日本音楽学会全国大会(1998年11月)で報告した。同じ内容の論文は、現在学会誌「音楽学」に投稿中である。またニューヨークでの伊藤道郎の活動についても、伊藤道郎の弟千田是也の資料を中心に資料収集を行った。グリフェスが伊藤のために作曲した日本的作品の自筆スケッチ、自筆断片、および自筆スコアのコピーをニューヨークより入手、また山田耕筰が同時期に伊藤のためにニューヨークで書いた作品の自筆譜、および自筆断片のコピーを日本近代音楽館で入手し、その関連について検討している。この問題については、伊藤道郎の舞踊様式継承者である古荘妙子氏(東京)、島崎さとる氏(ニューヨーク)からさらに情報を収集した上で、2.で得られた成果と共に次回の日本音楽学会全国大会で報告する予定である。
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