研究概要 |
兵庫県南部地震の余震を用いてS波偏向異方性の解析を行い,震源断層近傍とそこから離れたところで,結果が対照的であった.すなわち,震源断層近傍では,本震時の断層運動にともなうフラクチャが検出されたが,そこから離れると,そのようなフラクチャは検出されなかった.断層運動でできたフラクチャは地震後に次第に閉じていくと考えられるため(断層の固着過程),時間の経過とともにS波偏向異方性の様子も変化すると考えられる.そこで,本研究のために設置した淡路島北淡町平林での記録を用いて,予備的なS波偏向異方性の解析を行った.また, 「断層解剖計画」によって淡路島北淡町富島地区に掘られたボイリング孔(深さ1800m,800m)内に設置された地震計の記録も併せて用いた.その結果,断層運動でできたフラクチャにともなうS波偏向異方性が見られる頻度が下がっているようである.これは,期待したとおり,断層の固着過程が進んでいることを示していると思われる. また,本震前についても同様の解析を丹波地域で行った.S波偏向異方性は応力場を示す指標となるため,本震前後の応力場の変化をとらえられる可能性がある.解析の結果,水平最大圧縮応力方向が,本震後に約20度反時計回りに回転したことが分かった.これは,兵庫県南部地震の断層運動によって応力場が乱されたと解釈できる.
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