本年度は主として実験装置を開発し実験手法を確立した。 有機物の「糊」効果には二つの惑星科学的側面がある。その一つは微惑星の力学的強度を上げる効果、もう一つは微粒子の衝突合体成長を促進する効果である。微惑星の力学的強度は有機物の付着強度に関係すると思われる。そこでグリセリンを用いた付着力測定を行う実験装置を作製した。本装置は電子天秤とハイトグージからなり、薄いステンレスのプレート表面にグリセリンを塗りそのグリセリンに内部に生ずる引っ張り力を電子天秤により計測する。本年度は-30℃までの低温室と20℃の恒温室で予備実験を行い、付着エネルギーを測定するための実験手法を確立した。 一方、微粒子の衝突合体効率はその反発係数を測定することにより予測できる。そこで温度150K〜300K、衝突速度1cm/s〜100cm/sで反発係数を測定するための実験装置を開発した。本装置は液体窒素を入れるガラスデュワー瓶、その中に有機試料をセットするサンプルホルダー、衝突球を落下させる落下部から成る。鉄球を有機試料上に落下させ、その時の落下速度と跳ね返り速度を計測し反発係数を求める。本年度は本装置の試運転を終えた。今後この装置を用いて様々な温度、衝突速度そして有機物の厚さで反発係数、付着条件を調べることにする。
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