中高年の被験者(24名)は55歳から78歳の生活習慣病を持つリハビリ中(通院中)の患者で、脳血管系疾患群が11名、代謝系運動器疾患群が6名、心臓循環系疾患群が4名、その他の疾患群が3名であった。振動検査とともに脚伸展筋力、平衡能力(バランス)、レントゲン(DXA診断)による下肢骨密度と下腿三頭筋群の最大周径を測定診断した。24名中12名が亜骨粗鬆症、8名が真骨粗鬆症であった。基本的な測定診断結果からみて、本実験の被験者は典型的な高齢者群であり、日本老人の低い運動能力群であった。 振動実験の結果、中高年者の皮膚振動の場合は平均3〜120Hz、骨振動の場合は平均60〜500Hzの周波数帯域が抽出され、前者のピークパワー周波数(PPF)は74Hz、平均パワー周波数(MPF)は48Hz、後者のPPFは384Hz、MPFは186Hzを示した。他方青年の場合は、中高年の振動周波数帯域は同じであったが、皮膚振動のPPFは88Hz、MPFは62Hzを示し、骨振動では442Hz、MPFは246Hzを示した。中高年者と青年のPPFやMPF間にはそれぞれ統計上有意な差を示し(p<0.05)、骨や筋などの結合組織のスティフネス(硬さ)と変容(老化と衰退)状態が振動周波数において証明された。 これらの周波数帯域について低・中・高の3つの帯域に分類し、低(L)と高(H)の比率を算出し、組織の老化・衰退指数を提案した。すなわち、低周波数帯域は皮膚振動で3〜30Hz、中周波数帯域は31〜70Hz、高周波数帯域は71〜120Hzとし、骨振動では低が60〜170Hz、中が171〜320Hz、高が321〜500Hzと分類した。これらの帯域別のトータルパワー(面積)を計算し、低(L)/高(H)比を老化指数とした。中高年者の比率(%)は、皮膚振動において平均72%、骨振動において平均86%を示し、青年の場合は42%と36%を示した。骨振動の比率が皮膚振動よりも大きな変動を示したが、両者の比率を按分することによって生体結合組織のスティフネスと変容状態が評価された。本実験の振動周波数分析によって、生体組織の老化レベルを非侵襲的な方法として評価する資料が得られた。今後各種の生活環境下高齢者にこの方法を適用してみる必要があるだろう。
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