本研究では、好アルカリ性細菌Bacillus clausiiの環境適応型ハイブリッドべん毛モーター固定子MotAB複合体の結晶化およびX線構造解析を行い、イオン選択性における原子レベルでのメカニズムの解明とべん毛モーターの回転機構の解明を目的とした。さらに、共役イオンが変化する環境適応型べん毛モーターのビーズアッセイ法による1分子回転計測を行うことで、エネルギー変換における新たな知見を得ることを目指している。 結晶構造解析においては、B.clausiiのMotAB複合体とともに好アルカリ性Bacillus属細菌で共通の固定子MotPS複合体の両方を結晶構造解析のターゲットタンパク質とし、まず大腸菌を用いた高発現系を確立した。さらにMotPS複合体に関しては、20種類の界面活性剤を用いて可溶化効率を検討した。その中でよく構造を保持したまま可溶化できる界面活性剤が5種類あった。これらの界面活性剤を用いて精製を試みたところ、よく単分散した高純度の精製サンプルの調製に成功した。現在、これらのサンプルを用いて結晶化を試みている。 またビーズアッセイ法においては、B.subtilisのべん毛構成タンパク質に対する抗体を用いてビーズ接着の高効率化を試みた。結果、従来の未修飾ビーズに比べて効率的にべん毛フィラメントに接着することが分かった。しかし、現段階の効率では、ハイスループットな測定をまだ実現するには至っておらず、現在、さらに効率的な方法を検討している。
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