平成22年度の課題は、分析枠組みの精緻化及び実証作業に必要なデータを収集することにあった。本研究は日本とイギリスの若者雇用政策が形成される過程に着目し、政策形成過程におけるアクターの問題認識の違いが、策定される政策の相違に反映されているのではないかという仮説の実証を試みている。そのため、両国の若者雇用政策形成過程において影響力を有しているアクター及びそれらが若者雇用問題のどこに問題があると認識したかをまずは把握する必要があった。 先行研究の概観及び一次資料を収集した結果、日本の場合は若者雇用問題を自己責任として論じる傾向が強く、労働市場や雇用慣行を根本的に見直す視点からの政策提言が少ないという知見が得られた。また「能力開発」や「自己啓発」という概念を政策に織り込むことにより、若者自身も自己責任論を甘受している様子を確認した。これに対し、イギリスでは若年失業を「社会的排除」という概念を用い、個人の権利を十分に達成できていないという点から議論が出発していた。しかし、いずれの国においても新自由主義的な政策理念が背景に存在し、若者雇用政策に影響を及ぼしていることが確認できた。 日本とイギリスの両国において、新自由主義的傾向を有した若者雇用政策が採用されたにも関わらず、個別政策を検討すると両国の政策理念には差異があるように見受けられる。この疑問点を解明するために、平成23年度は事例研究に更に力を注ぎ、得られた知見が政治学の理論的観点からいかにして説明がつくのかについて考察を広げ、論文執筆へとつなげていきたいと考えている。
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