研究課題/領域番号 |
10J05686
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小坂 俊介 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 後期ローマ帝国 / 古代末期 / コンスタンティウス2世 / ユリアヌス / 皇帝 / 軍隊 / アンミアヌス・マルケリヌス / 歴史叙述 |
研究概要 |
本年度はまず計画に従って、コンスタンティウス2世の支配期間に起こった内乱の一つである、軍団司令官シルウァヌス反乱事件について検討を進めた。この事件については4世紀の歴史家アンミアヌス・マルケリヌスの実体験に基づく詳細な記録が遺されており、この史料に依拠して数多くの先行研究が生みだされてきた。しかしながらそれらの先行研究はアンミアヌスの記録に依存するあまり、他の同時代史料を軽視しているという問題がある。この問題を解決するために、アンミアヌス史料以外の同時代史料を全て収集しかつ比較検討した。その結果、アンミアヌスの著作が公刊される前と後では、他史料におけるシルウァヌス反乱の叙述に変化が見られることが判明した。またその変化は著作家の沈黙によるものではなく、そもそも反乱の詳細が世間に知られていなかったために起こったことを論証した。この研究結果を学会で発表し学会誌に公表した。 上記の研究過程において、本研究にとって必要不可欠の史料であるアンミアヌス・マルケリヌス著『歴史』の記録の信憑性が問題となった。当該史料の信憑性の判定は本研究に多大な影響を及ぼすため、計画を前倒しして、アンミアヌス研究の動向を網羅的に把握し整理する作業をおこなった。この結果、『歴史』の信憑性を判定するためには、各記述に対する個別作業を蓄積する必要があることが認められた。申請者の研究もこの作業の一つとして位置付けることができる。加えて、アンミアヌスその人についての議論、古典文学としての『歴史』についての議論など、アンミアヌスに関する研究動向を網羅的に把握することができ、この成果を学会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は計画通りシルウァヌス反乱について、一次史料であるアンミアヌス・マルケリヌスの記録を検討し、その記録が古代末期の歴史叙述において果たした役割を解明することができた。加えてアンミアヌスに関する研究動向の把握・整理をおこない、現在までの研究史を網羅的に把握することができ、次年度の研究の基盤が構築された。
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今後の研究の推進方策 |
まずは今年度研究を進めたシルウァヌス反乱事件についてさらに検討を進める。帝国が反乱事件に対してとった方策を具体的に明らかにし、当時の皇帝であるコンスタンティウス2世はなぜそのような方策をとったのか、またそれがコンスタンティウス2世政権のいかなる特色をあらわしているのかを明らかにする。 次いでこれまで検討してきた研究内容を総合するべく、コンスタンティウス2世支配期の高位官職者らについて検討を進める。具体的には、彼らの出身階層、活動内容、法制上の位置づけなどに着目する。彼らはコンスタンティウス2世の支配期を特徴づける存在であり、本研究においてその検討は不可欠と思われる。
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