研究課題
今日に至るまで、衝動性の根本的解決についての知見は充分ではない。本研究では、報酬・罰によって生じる衝動性のメカニズムを解明するために、大学生を対象に報酬及び罰をフィードバックさせるStop Signal Paradigmを実施した。Stop Signal Paradigmとは衝動性の概念の一つである反応抑制を実験的に測定するための課題で、報酬や罰を与えることによって課題のパフォーマンスがどのように変化するかを調べた。なお、衝動性の個人差について、本研究ではサイコパシーという特徴に着目した。サイコパシーとは、冷淡で利己的、衝動的行動や反社会的行動を起こすといった特徴の総称で、反社会性パーソナリティ障害と深く関連する。実験の結果、サイコパシー傾向の低い参加者は報酬、及び罰が伴わない条件に比べて、伴う条件で反応抑制の精度が亢進した一方で、サイコパシー傾向の高い参加者は、両条件で反応抑制の精度に違いは見られなかった。この結果は、報酬及び罰が伴う状況では、サイコパシー傾向の高い者は自分の行動を抑えることが困難となることを示しており、サイコパシーが報酬、及び罰に対して特異的な感受性を有している可能性を示唆している。さらに、本研究の結果は被収容者を対象とした先行研究の結果を追従するものであった。このことより、サイコパシーの報酬、罰感受性の特異性に関して、健常レベルから臨床レベルへと至る質的な連続性が示唆された。本研究によってもたらされたサイコパシーの新たな知見は、衝動性、及びそれに関連したサイコパシーの根本的解決に向けた方法論の構築につながる。
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巻: 印刷中
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