蛋白質の共同作業による多様な遺伝子情報創出の仕組みとその制御

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11101003
• 研究機関: 国立遺伝学研究所
• 研究代表者: 小川 智子 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 教授 (80028208)
• 研究分担者: 小川 英行 岩手女子看護短期大学, 教授 (70028207) ; 田中 茂生 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 助手 (10281586) ; 太田 力 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 助手 (10290892)
• キーワード: 減数分裂期組換 / DNA二重連鎖切断の修復 / Mre11,Rad50,Xrs2蛋白質 / RAD51の転写制御 / Mre11 DNA結合活性

研究概要

(1)組換え開始機構と細胞周期チェックポイント機構との関連について:
Mre11、Rad50、Xrs2蛋白質を含む複合体は、組換えのDNA二重連鎖切断の導入と、その後の切断端のプロセシングで働く。この二つの反応で関与する複合体は異なる。また、後者の反応で、Mre11は細胞周期チェックポイント機構によってリン酸化の修飾を受ける。この複合体はまた、DNA傷害の修復の際にも用いられる事などを示した。
(2)Mre11の2個のDNA結合領域の役割:
Mre11蛋白質は中央(A-site)とC末端(B-site)の2箇所にDNA結合部位を持つ。前者はテロメア配列に結合すること、また、Mre11ヌクレアーゼ活性に必要なDNA結合部位である。後者は減数分裂期組換えのホット・スポット領域領域の認識に必要である。これらの結果は、Mre11のDNA結合部位が、多様な反応の選択に重要な役割を担っている事を示している。
(3)交叉型組換えと染色体の分配の関連について:
MER3遺伝子機能が交叉型組換え体の形成に必要であり、その機能の欠損は減数第1分裂での染色体分離を増大させる。交叉型組換え体形成と染色体分離の関連を分子レベルで解析できる端緒を作った。
(4)RAD51遺伝子のG2期に置ける転写抑制機構の解析:
RAD51遺伝子の転写の誘導の終結に関与するシス因子を-700領域に固定した。この塩基配列を認識するCbf-1蛋白質を見つけ、Cbf-1がDNA傷害に特異的な、RAD51遺伝子発現のG2期抑制因子であることを示めした。

研究成果

• [文献書誌] Hideo Tsubouchi: "Exol roles for repair of DNA double-strand breaks and meiotic crossing over in Saccharomyces cerevisiae"Mol. Blol. Cell. (in press). (2000)
• [文献書誌] Arika Shinohara: "Rad51/RecA protein families and the associated proteins in eukaryotes"Mutatlon Res. 435. 13-21 (1999)
• [文献書誌] Takuro Nakagawa: "The Saccharomyces cerevisiae MER3 gene, encoding a novel helicase-like protein, is required for crossover control in meiosis"EMBO J.. 18. 5714-5723 (1999)
• [文献書誌] Takehiko Usui: "Complex formation and functional versatility of Mrell of budding yeast in recombination"Cell. 95. 705-716 (1998)
• [文献書誌] Akira Shinohara: "Stimulation of Rad51-mediated Recombination by Rad52 in Saccharomyces cerevisiae"Nature. 391. 404-407 (1998)
• [文献書誌] Akira Shinohara: "Rad51-independet Homologous Recombination Mediated by Rad52"Genes to Cells. 3. 145-156 (1998)
• [文献書誌] 押海裕之: "組換えに関与するMrell機能の多様性の出現のしくみ"実験医学「トピックス」(羊土社). 757-760 (1999)
• [文献書誌] 太田力: "真核生物の組換え反応の多様性"核酸 蛋白質 酵素 (共立出版). 1830-1837 (1999)