ヒトから酵母に至るまで高度に保存された哺乳動物細胞のストレス蛋白質HSP105(HSP105αとHSP105β)の機能を明らかにすることを目的として、以下の研究をおこなった。 1、HSP105の分子シャペロン機能 (1)ルシフェラーゼ(LC)は熱処理すると凝集し失活するが、HSP105αまたはHSP105β存在下の熱処理ではLC凝集は抑制された。(2)HSC70/dj-1存在下で熱変性したLCはウサギ網状赤血球抽出液(RRL)の添加により再活性化されたが、HSP105存在下で熱変性したLCは再活性化されなかった。(3)HSC70/dj-1存在下で熱変性したLCのRRLによる再活性化は、HSP105αまたはHSP105βにより濃度依存的に抑制された。逆に、HSP105による熱変性LCの再活性化抑制はHSC70/dj-1により減少した。 以上の結果から、HSP105α及びHSP105βは、タンパク質の熱凝集を抑制するとともに、HSC70系のシャペロン機能を負に調節すると考えられた。 2、HSP105のリン酸化修飾 (1)HSP105α及びHSP105βは、[^<35>S]メチオニン及び[^<32>P]正リン酸標識、脱リン酸化酵素処理により、共にリン酸化型及び脱リン酸化型として存在することが明らかになった。(2)リン酸化アミノ酸分析により、これらは共にセリン残基がリン酸化されること、さらにゲル内リン酸化法によりHSP105をリン酸化するキナーゼはヘパリンおよびGTPにより阻害されたことからCLIIキナーゼであると考えられた。 現在、HSP105のリン酸化部位及びリン酸化による機能修飾について検討中である。
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