研究概要 |
分子量の大きな生体超分子複合体の構造解析を多波長異常分散法により行うためには,より精度の高い回折強度データを得る必要がある.本年度は,SPring-8の生体超分子ビームライン(BL44XU)において,多波長異常分散法を高分子量タンパク質複合体に適用するための高精度な回折強度データ収集システムの開発を行った生体超分子ビームラインでは,イメージングプレートを中心としたデータ収集系を用いて,生体超分子複合体を含むタンパク質結晶のデータ収集を精度良く測定するシステムの立ち上げを終了し,ハードウェア,ソフトウェア共にさらに高精度のデータ収集システムへの改良を進めている. これと平行して,多波長異常分散法を高分子量のタンパク質の構造解析に適用する試みを行った.分子内に13個のメチオニン残基を持つ分子量約50,000(454残基)のタンパク質importin βにセレノメチオニンを導入し,SPdng-8のBL45XUにおいてセレンの吸収端を含む3波長での回折強度データ収集を測定し解析に用いた.この結晶は非対称単位中に2分子のimportin βを含んでいるので構造解析には26個のセレン原子の位置を決める必要があったが,Shelx-97,MLPHAREを利用して構造解析に成功した.これにより,生体超分子複合体の構造解析において予想される多数の重原子位置を決めなければならない問題も,精度の高い回折強度データ収集を行うことができれば,あまり問題にならないであろうという見通しを得ることができた.
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