研究概要 |
生物科学の急速な発展により,基本的生命システムを構成する多種類の生体分子群を,個別ではなく一括して研究対象とし,酵素反応における分子認識過程や触媒過程を,系統的に,原子分解能で研究することが可能になりつつある。そこで,高度好熱菌(Thermus thermophilus HB8)をモデル細胞とし,構造・機能ゲノム科学的解析を行っている。本高度好熱菌は独立に生育可能な最小生命体の一つで(ゲノムサイズはわずか1.8Mbpで,蛋白質は約1,500種),多くの生物に共通で基本的な生命現象が,進化の過程で"濃縮"されている。この高度好熱菌は,遺伝子操作系が確立した生物であり,しかも,その生物の中でもっとも耐熱性が高い。その蛋白質は安定性が高く,結晶化も容易であるので,立体構造解析や分子機能解析に有利である。そこで,DNA修復系やアミノ酸代謝系の酵素群を集合系マシーナリーの例とし,それら酵素群の機能を立体構造に基づいて原子レベル分解能での系統的解明を目指している。 これまでに,ゲノム解析はほぼ完了した。さらに,全蛋白質約1,500個のうち,これまでに約500個の蛋白質の量産化を手がけた。His-tagをN末端に付加させた蛋白質は,不溶性になることが多かったため,His-tagを付加しない蛋白質を量産化している。立体構造解析が完成した蛋白質は,UvrBを含めてこれまでに約数個だが,これまでに他の研究者によって決定された蛋白質を合わせると,本高度好熱菌蛋白質の内,約40個の蛋白質の立体構造が決定されたことになる。
|