研究概要 |
1.ラット小脳顆粒細胞の初代培養系とトポII阻害剤ICRF-193を用いて,ある種の遺伝子に対するトポIIβの発現誘導作用は培養初期の3-4日間で完了することが分かった.また,トポIIβの作用点は転写以前の過程にあることを確認した. 2.この系で発現する遺伝子の発現プロフィルを,cDNAマクロアレイフィルターを用いて解析した.培養1日目,5日目,ICRF-193存在下で培養5日目の細胞からmRNAを調製して発現レベルを比較した.シグナルが得られた300個の遺伝子のうち18%のものが発現誘導を受け,その内訳をみると予想どおり神経関連遺伝子が多く含まれていた.これらの1/3はトポII阻害剤で発現誘導が抑制されるが(Class I),それ以外はトポII阻害剤で誘導が抑制されない(Class II).残りの大部分の遺伝子は培養初期からすでに発現しており,トポII阻害剤では抑制されない(Class III).この結果は前年度に少数の遺伝子で観察された結果とも一致し,分化の過程で発現が誘導される遺伝子にはトポIIβの活性に依存するものと,依存しないものがあることが明確になった. 3.これまでの解析から,トポIIβが分化関連遺伝子のクロマチン領域を脱凝縮して転写の活性化を行うという仮説を立て,遺伝子領域のDNase Iに対する感受性を測定することにより,クロマチンの高次構造変化を検出することにした.定量的PCRを用いた方法を考案し,いくつかの遺伝子について基本的な要因を検討して,安定した結果を得ることができるようになった.
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