研究概要 |
(1)複製開始モニター機構の鍵を握ると考えられる複製開始前複合体(Pre-RC)の形成と活性化、崩壊過程を明らかにするために、分裂酵母複製開始点認識複合体(ORC)のサブユニットSpOrc1がCdc18(Cdc6)蛋白質とMCM複合体の複製開始点への結合過程のそれぞれに独立した機能を持つこと、またS/Mチェックポイント機構に機能を持つことを示した。 また、複製モニターに関与する因子として領域代表である荒木らによって分離された出芽酵母SLD3の分裂酵母ホモログpsl3をクローニングし温度感受性変異を分離した。Psl3はMCMと相互作用するCdc45蛋白質の複製開始点への結合に関与することを示した。 (2)アフリカツメガエル卵無細胞複製系を用いて複製モニター機構を研究する上で、最も重要な因子の一つであり未同定であったCds1チェックポイントキナーゼのアフリカツメガエルホモログXCDS1をクローニングした。野生型XCds1には自己リン酸化による高リン酸化型が存在し、高リン酸化型XCds1はCdc25cを基質とする高いリン酸化活性を有することを見いだした。他方、カエル卵抽出液中のXCds1は低リン酸化型のみであり、卵抽出液中にはXCds1を脱リン酸化して不活化する活性があることを見いだした。また複製モニター機構に関わる新たな因子として、荒木らによって出芽酵母で同定されたPsf1のアフリカツメガエルホモログをクローニングした。 (3)ヒトMcm4,6,7ヘリカーゼ活性が、Cdk2/cyclinAによるMcm4のアミノ末端領域のリン酸化により阻害されることを見出した。この反応は、ゲノムの重複複製の阻止に関わることが考えられる。マウスMcm4,6,7にもヒトと同様のヘリカーゼ活性を検出しているが、他のMcm複合体、特にヘテロMcm2-7にもそのような活性を検出するため、組み換え体マウスMcm2-7の調製法をほぼ確立した。これまでの結果から、Mcm2-7を含め他のMcm複合体にはヘリカーゼ活性は検出されていない。
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