研究概要 |
1.複製開始モニターで中心的役割を持つMCMの活性制御機構の解析から以下の知見を得た。 (1)複合体中のヒトMcm2はCdc7/Dbf4キナーゼとCdk2/cyclinAキナーゼによってリン酸化された。 (2)Cdk2キナーゼによるMcm4のアミノ末端領域リン酸化は、Mcm4,6,7ヘリカーゼ活性を阻害した。 (3)Mcm2とMcm3/5はMcm4,6,7ヘリカーゼ活性を阻害したが、Cdc45,SSB(RPA)は影響しなかった。以上の結果は、Mcm4,6,7ヘリカーゼ活性が、Cdc7,CDKによるリン酸化と他のMcmにより制御される可能性を示す。 2.複製開始モニターの実体を解明するためMCMと相互作用する因子の解析を行った。 (1)Cdc45と相互作用する分裂酵母Sld3を同定し、複製開始に必須であることを示した。 (2)MCM,Sld3,Cdc45は複製開始点上で相互作用し、Sld3はCdc45の複製開始点への結合に必要である。 (3)ツメガエルCdc45は染色体上でMCM,DNA polymerase αと相互作用する。 (4)MCM複合体はCdc45に依存してATPase活性と弱いDNAヘリカーゼ活性を有する。 (5)ツメガエルSld5,Psf1を同定し、MCM,S-CDKに依存したSld5-Psf1複合体の染色体結合が複製開始に必要であることを示した。 3.複製チェックポイント機構と複製開始複合体の関連を示す以下の知見を得た。 (1)分裂酵母sld3変異株はチェックポイント異常を示し、Sld3を含む複合体がチェックポイント機構に関与する可能性が示唆される。 (2)チェックポイント活性化に依存して、ツメガエルChk1キナーゼはMcm3をリン酸化する。この結果はMCMがチェックポイント制御の標的である可能性を示唆する。
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