研究課題/領域番号 |
11301001
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上倉 庸敬 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90115824)
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研究分担者 |
天野 文雄 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90201293)
森谷 宇一 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70033181)
神林 恒道 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80089862)
藤田 治彦 大阪大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (00173435)
奥平 俊六 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30167324)
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キーワード | 芸術概念 / 近代日本 / 近代ヨーロッパ / インターカルチュアリズム / コロニアリズム / モダン / ポストモダン / 現代キリスト教思想 |
研究概要 |
本研究は第2年度に入り、研究組織の確立と基礎概念の整理を行った第1年度の成果をもとに近現代の日本における「芸術」観がいかにして誕生したかを跡づけた。新知見の主たるものを列挙すれば、1)森鴎外が移入した早稲田・慶応の私学系美学は文学の現況に棹さし文学論・演劇論へと展開した。もともとが19世紀西欧の現況と深く結びついた流行思想の一種で普遍性に欠けるところがあったからである。2)対抗して東 京大学等が移入した官学系美学は抽象的な思考に偏り哲学のうちに解消された。もともとが西欧における人間把握と係わり、そうした人間観と無縁な日本においては根のない思弁だったからである。3)近代日本に独自な芸術観の成立に力があったのは個別芸術ジャンルにおける各本質論ことに文学論であり絵画論であって、それ以外の芸術論ではなく、ましてやアカデミズムの美学ではない。4)文学論は西欧を受容した近代日本人論であり、第1期は長谷川辰之助(二葉亭四迷)を間に挟んだ鴎外・逍遥の論争に集約され理念と生活の分離が確認された。第2期は夏目金之助(漱石)の文学活動であり初めて芸術の本質論と人間論が一体となって論じられた。5)絵画論は西欧の技術を受容した近代日本の感性論であり、そこでは文学論におけるような現状の確認はなされず、ために日本の伝統と西欧の現状のあいだを揺れうごくのみで、技術の素材に基づく洋画日本画の分離が生じた。6)技術を軸にすえた感性論の展開を実際に窺わせるものは、文章になった議論ではなく、美術・工芸を実践的に教育する学校制度である。明治20年前後における工芸学校理念の確立は、近代産業社会たる近代日本に独自の感性が芽生えたことを語る。 こうした成果を受けてデザイン理論研究グループはすでに戦後デザイン思想の把握に取り組んでいる。次年度は戦後世界をも視野におさめ外国人研究者との知見交換を推進し、当初計画よりも総括的な中間報告を試みたい。
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