研究課題/領域番号 |
11301001
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上倉 庸敬 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90115824)
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研究分担者 |
藤田 治彦 大阪大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (00173435)
森谷 宇一 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70033181)
神林 恒道 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80089862)
永田 靖 大阪大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (80269969)
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キーワード | 芸術概念 / 近代日本 / 近代ヨーロッパ / インターカルチュアリズム / コロニアリズム / モダン / ポストモダン / 現代キリスト教思想 |
研究概要 |
本研究の第3年度である。昨年度に見送った中間報告の提出を予定していたが、すでに最終段階に入った分担研究もあり、足並みをそろえ最終年にあたる来年度、総合的な報告書を総括することにした。日本における「芸術」概念の成立を跡づけた昨年度につづいて本年度は、(1)主として第二次大戦以後における各芸術ジャンルの展開を確定、(2)日本と比較するために同じく西欧の「芸術」概念を導入してきたアジアの事情を研究(そのためにインドネシア・ジャカルタ芸術大学学長イマデ・バンダム氏を招聘、講演のあと討論を交わした)、(3)現在の西欧から日本の「芸術」概念がどのように見えるかという視点から、逆に西欧における「芸術」概念を考究(そのために英国ロンドン大学日本美術史学教授タイモン・スクリーチ氏を招聘、講演のあと討論を交わした)した。その結果あたらしく得られた知見の主たるものは、(1)日本独自の芸術運動は60年代半ばから70年代において、一種の完結をむかえた、(2)70年代半ば以降、いわゆる純粋化を維持しようとする芸術ジャンルと「あたらしさ=総合」という視点からクロスオーバーをめざす芸術運動とに日本の「芸術」概念は二極化した、(3)アジア諸国は戦後、まずは西欧化の先進国たる日本に倣い、西欧それ自体を導入することは少なかった、(4)現在のアジア諸国においては、ジャンルの純粋化ではなく自国の伝統的「芸術」観と現代世界の「芸術」観が拮抗する、(5)西欧は西欧独自の「芸術」観を日本の芸術に押しつけはしない、(6)が、日本の「芸術」観を採りいれてるのでもなく、西欧独自の新しい「文化」概念を創出しようとしている、などである。こうした成果を受けて来年度は、(1)日本の近代「芸術」概念が成就し、また喪失たものを客観的に考察し、(2)なぜその「概念」が死を迎えねばならなかったかを解釈し、(3)「ユニ・カルチャー」の傾向にある現代世界で日本が果たしうる役割を確定するつもりである。
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