研究概要 |
2プライ積層材を用いた外気湿度の変化によって自動開閉するルーパーの試作では,収縮率が異なる2つの部材を接着し湿度変化による部材のそりを測定したところ,部材の厚さが数ミリ以下の薄い場合には積層材は湿度変化に敏感に反応するが,部材の厚さが厚くなるに伴い湿度変化への反応性は低下した。また,部材の収縮率とヤング率から理論的に算出したそりの値(理論値)と実際に測定したそりの値(実験値)との間には差異があり,実験値が小さな値を示した。 吸放湿性を高めた木材の壁面材への適用と居住性の評価では,基礎固めを優先し,膨張・収縮の異方性を検討した。この結果,乾燥によって細胞壁は厚さ方向に収縮すると同様に幅方向にも収縮し,厚さ方向の収縮は接線壁と放射壁で大差はないが,幅方向の収縮は放射壁よりも接線壁で顕著であることを明らかにした。つまり,横断面にみられる異方性は,細胞内腔径の変化,すなわち細胞壁の幅方向の収縮率が接線壁とと放射壁で大きく異なることが原因の1つであることがわかった。 木材利用の省エネルギー性,低公害性,環境安全性の評価では,文献の収集に努めると同時に,走査電子顕微鏡とエネルギー分散形X線分析装置を使って,薬剤を注入した木材中の金属元素の分布をビジュアル化し,木材組織によって元素の分布状態に違いがあることを確認するとともに,木材の耐朽性を理解するのにこの手法が有効であることを示した。
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