研究概要 |
木材の吸放湿性の拡大と再現性の研究では,気乾状態のカシとスギを用い,エンドマッチした同一寸法の柾目板表面に種々の機械加工処理を施し,木材の表面積を50〜100%増大させた試験片を製作した。これらの試験片を強制循環式の恒温恒湿機および無風状態のデシケータ中で吸湿あるいは放湿させ,時間の経過に伴う重量変化と寸法変化を測定した。この結果,処理を施さない板材よりも施した板材の方が明らかに吸放湿の応答性が速かった。すなわち,試験片を貫通する穴あけ処理や両側表面に鋸目を入れた処理では応答性が速く,逆に片側表面に貫通しない穴をあけた処理は機械加工を施さないものとほとんど変わらなかった。片側表面に鋸目を入れた処理ではそれらの中間の応答性を示した。 吸放湿性を高めた木材の壁面材への適用と居住性の評価では,底面が開放された2個の金属容器を使ってそれぞれ4箇所の内側側面にスギ柾目板を接着し,1つ目の容器では鉋削しただけの板材が,2つ目の容器では鉋削しかつ繊維方向に鋸目を入れた板材が壁面材料となる小空間を作った。これらの小空間内と外側で日中の温度と湿度の変化を測定したところ,両者の間には温度変化にほとんど差はみられないが,関係湿度は外側で大きく変動するのに対して小空間内ではほぼ安定していた。また,温度が急激に上昇するとき,外側では湿度が低下するのに対して小空間内では湿度が増加した。1つ目と2つ目の容器の小空間間では温度変化に違いは見られず,温度の上昇に伴い湿度も増加する点ではともに同じであったが,関係湿度に2%ほどの違いがあった。
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