研究概要 |
「カテゴリ化と姿勢情報の統合メカニズム」(乾,小西) 心理実験で得られた被験者の反応時間分布,速さ-正確さ曲線の分析から,物体認識が「記憶表現との鋳型照合的な画像ベースの過程」と「三次元構造情報を利用して記憶表現に変換を加えて比較照合を行う構造ベースの過程」の二つの過程から成り立っていることを示唆する結果を得た.さらに,南・乾(2002)ではワーキングメモリ課題中の情報保持だけでなく,情報の処理に焦点を当て,前頭前野ワーキングメモリにおけるルールの符号化に関するシミュレーションも行い,良好な結果を得た. 「注意機能と統合メカニズム」(斎木) 色と形態で定義された物体を用いたMOPT課題による実験を行った.色と形態の組み合わせ表現を3-4個同時に保持できないこと,また変化の検出とその内容の同定は2段階を経ていることを示唆する結果を得た.背側,腹側経路で処理された情報が統合された物体の表現が脳内で3-4個同時に保持されるのではなく,我々が生成,保持,変換できる物体表象の数は極めて限られ,選択的注意による特徴統合によって動的に生成と解体を繰り返していることがわかった. 「視覚認知における動作情報の役割」(杉尾) fMRIにより把持の手形状生成時における物体の局所的特徴と熟知度の影響を検討した.その結果,取っ手がある日常物体の把持が,意味知識と局所的特徴の両方から活性化された運動スキーマに依存していることが示された.この結果は,物体認知と把持が脳内で密接に連結していることを示唆するものである. 「アフォーダンスの脳内表現」(林) 到達把持動作の途中でターゲット位置が変化した場合のサッケード潜時を計測した.6名の被験者において,動作を伴う場合と目視のみの場合の平均値は,それぞれ258±35ms,323±40msであり,到達把持動作によって潜時が短くなることが明らかになった.視覚的注意の集中度が眼球運動サッケードの潜時と正の相関をもつとすれば,到達・把持動作の初期には,注意が解除され易い状態にあることを示唆している.
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