研究概要 |
本研究は,現代都市を襲った1995年兵庫県南部地震が起こした建築鉄骨の脆性破壊について,その現象を解明し,脆性破壊に対する高層建築鉄骨の安全対策技術を提案することである。具体的な研究課題は次のとおりである。 1)脆性破壊によって鉄骨造建築物の安全性がどのような脅威を受けるか。 2)現代の高層建築鉄骨に生じうる脆性破壊はどのような破壊形態であるか。 3)脆性破壊に関わる鋼材の特性は何であるか。 4)脆性破壊に対して溶接はどのような影響をもたらすか。 5)地震時の繰返し変形履歴は脆性破壊にどのような影響をもたらすか。 6)脆性破壊が生じたのち構造全体の崩壊を防止するフェイルセーフ機構は可能か。 7)脆性破壊の防止あるいは脆性破壊による建物崩壊の防止のために,この研究および関連研究を基にしてどのような設計技術が提案できるか。 今回の研究は,これらの課題に対して実験と解析の両面から検討を行い,それぞれについて解答を導き,脆性破壊に関する多くの基本的知見を得た。また,それらを総合し,て脆性破壊に対する当面の対策技術を設計法と施工法に関して提案することができた。しかしながら,地震時の動的な変形過程で生じる脆性破壊には多くの要因が複雑に関係しており,最終的な結論を得るにはさらに実証試験を続けデータを蓄積していく必要があることも明かとなった。
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