研究課題
基盤研究(B)
今年度は7月と1月に研究代表者、分担者全員による研究会を開き、活発な議論と情報交換を行った。今年度の顕著な成果は以下の通りである。芸術家の旅行を裏付ける資料である素描帖の一例としてジョヴァンニーノ・デ・グラッシの素描帖について綿密な研究がなされ、人文字や動物モティーフなどの伝搬経路が明らかにされた(小佐野)。またフランス・アカデミーのローマ賞受賞者のローマ滞在宿舎であるヴィラ・メディチの実地調査が行なわれ、彼らのローマ滞在がフランス美術の展開に与えた影響を跡付けた(三浦)。エル・グレコのイタリア滞在とその間のズッカロ兄弟との影響関係を明らかにした(越川)。またゴヤのエル・エスコリアル素描帖の図像データベース化を進め、全頁の画像および文字データの入力を完了した(小佐野ほか)。その過程で古代彫刻の受容に関し新たな知見が得られ、現在比較対象画像の入力を行なっている。今後ファン・ダイク(中村)やデューラー(秋山)等の素描帖の入力が予定されている。また日本美術に関しては、与謝蕪村の讃岐滞在が彼の画業に与えた影響や真景図についての研究がなされた(佐藤、山下)。このほかルーベンス(中村)、アンコーナのキリアクス(秋山)、フェラーラ宮廷(京谷)等における旅行の意義およびその他の素描帖についての研究が進展中である。なお次年度には、長谷川等伯の能登滞在についての実地調査および研究(佐藤、山下)、ヨーロッパにおける素描帖の実地調査および研究(小佐野、越川)も予定されている。
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