研究概要 |
らせんは高分子に特徴的な形状であり、右巻と左巻があるが、それらは互いに鏡像体の関係にある。一般の合成法ではらせん状高分子をラセミ混合物として得ているが、らせん方向選択的(SSS)重合を行うことができれば一方向のらせんを持つキラルな高分子が得られる。我々は数年前Pd-Pt2核錯体1がイソシアニドのリビング重合に活性を示すことを見出し、ブロック共重合法によるイソシアニドの新規なSSS重合に成功した。本研究ではSSS重合法の確立と機能性高分子素子の開発を目的にしている。本年度は、そのSSS重合法の確立を試み、更に新規なイソシアニドポリマーの合成を検討し、下記の研究成果を得た。 1.ブロック共重合法により1とキラルなイソシアニド2から、らせんキラルなオリゴマー錯体3を合成し、それを開始剤にアキラルイソシアニド4を重合させると3のらせん方向を保持した右あるいは左巻らせんのポリイソシアニドが合成できる。本年度は種々のキラル及びアキラルイソシアニドを用て詳細な検討を行い、本方法による一方向巻のらせん構造をもつポリマーの合成を確立した。 2.デンドリマーを多点活性触媒として利用することを目的に、先ずベンゼンの1,3,4-位に1のPd-Pt2核錯体ユニットを導入した錯体5をモデル触媒として合成し、それを用いてイソシアニドの重合を試みた。その結果、3点共にイソシアニドの重合に活性を示し、ブロック共重合も円滑に進行することを確認した。従って、5はイソシアニドの重合に対して3点活性開始剤として作用し、3本腕のスターポリマーを与えることが分かった。 3.パラ位にポルフィリンを導入したフェニルイソシアニド6を合成し、1を開始剤として6の重合を試みたところ、重合反応は円滑に進行しポルフィリンを側鎖に持つポリマーが生成した。ポリマーのUVスペクトルなどから側鎖置換基のポルフィリンはポリマー主鎖の周囲に規則的にスタックしていることが分かった。
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