研究課題/領域番号 |
11460079
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安田 征市 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (80002070)
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研究分担者 |
今井 貴規 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (20252281)
福島 和彦 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (80222256)
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キーワード | リグニン / 酸可溶性リグニン / リグニン-炭水化物結合体 / 縮合反応 |
研究概要 |
研究内容を酸可溶性リグニン(acid soluble lignin:ASL)の生成とリグニンの機能性物質への変換に重点をおき、研究を進めている。 1.ASLの生成 これまでの研究結果より、ASLはリグニン-炭水化物結合体(lignin-carbohydrate compounds:LCC)と低分子リグニン分解物からなり、さらに木粉試料を72%硫酸で処理した際の極初期の段階で生成していることが知られた。ASL中のLCCの生成と構造に関する知見を得るために、グアヤシル核およびシリンギル核を有するそれぞれの簡単なリグニンモデル化合物の混合物をヘミセルロース共存のもとに72%硫酸で処理すると、リグニンモデル化合物間の縮合反応生成物(リグニンの縮合反応生成物に相当)に加えて低収率でLCCが生成した。生成したLCCはシリンギル核を有しており、グアヤシル核を有するLCCは検出できなかった。生成物の定量と本実験で明らかになった芳香核の反応性から、グアヤシル核は優先的に縮合反応に関与し、他方、シリンギル核は立体障害を受けるために縮合反応が遅く、それ故にヘミセルロースとの反応生成物を与えると考えられる。ASL中のLCCが上記以外の反応、例えば天然に存在するLCCの残存や変質、新たな生成機構の存在などについても今後検討する予定である。 2.機能性物質の調製 前年までに、高度の縮合構造を有する硫酸リグニン(=クラーソンリグニン)から市販のフェノール型とスチレン型の中程度の性能をもつ強酸型陽イオン交換樹脂を定量的に調製した。今年度はASL中のLCC構造に類似した新たな界面活性剤の調製を試みた。リグニンモデル化合物と反応性に富んだ単糖であるキシロースを72%硫酸触媒のもとに反応させると、低収率でLCCを生成した。5-メトキシクレオゾールを芳香核モデルとした反応では約50%収率でLCCを与えたが、縮合型リグニンモデル化合物とキシロースとの反応では極端に収率が低下し、収率に及ぼすリグニン構造の立体的障害の影響が多きいことが明らかになった。そこでLCCそのものの構造を有する界面活性剤の調製は今後の検討課題とし、単糖に代えて極性官能基を有するグリオキサル酸を用い研究を進めている。現在、モデル化合物を用いて反応条件の検討と生成物の構造について検討している。
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