研究概要 |
尿細管糸球体フィードバック(TGF)機構の伝達物質候補としてアデノシン、一酸化窒素(NO)の腎間質内動態を検討していたが、本年度ではアデノシンの前駆物質であるATPもアデノシンと同様血管外(間質側)より投与すると強い血管収縮作用を発揮することが分かったため、ATPとの関連も合わせ検討した。ペントバルビタール麻酔イヌの腎被膜除去後、ファイバー型透析プローブを腎皮質内に刺入・固定後10μl/minの速度で灌流し、腎間質内アデノシン、ATP、NO代謝物(NOx)動態を以下の条件下で検討した。1)腎動脈内に高張食塩水を注入し尿細管でのNa再吸収量を増加させると、腎血管の収縮と間質内アデノシン濃度の増加が観察された。この腎血管の収縮は、アデノシン1受容体拮抗薬で遮断されたため、アデノシンがTGF機構の伝達物質である可能性を示唆する。2)アデノシンの腎血管作用にはNOが関与することから、NOx, cGMPの腎間質内動態も検討した。NOx, cGMPは腎灌流圧が75〜180mmHgの圧範囲では変化せず、それ以下の虚血時のみ減少することから、NOはTGF機構の伝達物質というよりはむしろ修飾物質であると推測している。3)TGF機構を活性化したときの腎間質内ATP濃度を検討した。腎間質内ATP濃度は、腎灌流圧と逆相関することあるいはTGF機構の刺激(アセタゾラマイドの腎動脈内投与)に対して有意に増加することを見出した。すなわち、腎血管抵抗値の変化と非常に高い相関関係を示していることが分かった。以上、これら一連の研究により、生理的条件下で腎間質中の生理活性物質濃度の測定が可能となり、アデノシンもしくはATPがTGF機構の伝達物質であるとの確証を持つことができた。
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