研究概要 |
この数年間にわたる一連の研究で,造血前駆細胞のT細胞系列への分化決定は,胎仔肝臓(FL)の中で行われることを明らかにしてきた.この研究で用いたのはミエロイド,TおよびB細胞系列への分化能をしらべるmultilineage progenitor(MLP)アッセイ法であった.しかし,この方法で検出されたT前駆細胞(p-T)をTおよびNK系列への分化能をしらべることができるアッセイ系でしらべた結果,FL中のp-TはすべてT/NK bipotentであった.さらに,胸腺中でのT細胞分化段階に伴うNKへの分化能の変動をしらべた結果,胎生12日目のCD44^+CD25^-FcR^-群のT前駆細胞はすべてNKへの分化能を持っていた(p-TNK).この群にはNKのみへ分化するp-NKも多く存在した.胎生14日目のCD44^+CD25^-群中にはT細胞だけをつくるp-Tが出現するが,その比率はp-T/NKと同じレベルである.TCRβ鎖の再構成を行う直前のCD44^+CD25^+群に至って初めてp-Tが大多数を占めるようになる. このような分化決定にかかわる機構を明らかにするために,胸腺中の最も未分化な前駆細胞を含む胎生12日目のCD44^+CD25^-FcR^-細胞ヘレトロウイルスペクターを用いていろいろな遺伝子を導入する準備を行っている.
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