1.家族経営協定の普及体制は、大別して経営主へのアプローチを基本とする農業委員会主導型(北海道)と女性農業者のエンパワメントを中心におく農業改良普及センター主導型(宮城県・広島県等)に分かれている。全国調査の結果も親子協定型(直系家族モデル)から夫婦協定型(各家族モデル)ヘシフトしていることを示している。 2.家族経営・法人農家に対する郵送アンケートの実施結果は、家族モデルに直接関係する「将来の望ましい同居の仕方について」の回答は、年齢・性別に関わりなく生活分離を志向しており、完全同居型が少数派となり、隣居型や廊下でつなぐ【離れ】方式型が選択されており、職住分離型もみられることから、核家族化への動きは明確である。 3.合理化・近代化の帰結と経営方針の選択については、生活優先志向が明確となり、マイペース型の農業が選択されているが、競争原理のなかで、共同組織<直販センタ>をつくって乗り切る意識も強い。生産者と消費者の連携が強化される動きに対応して、女性の発言権や貢献が拡大しているためである。 4.農家家族への政策的介入の歴史は、男女共同参画社会法をうけて女性の経営への貢献を評価する制度化を実現させてきたことが女性の権利性を重視する農家家族モデル(核家族モデル)へとシフトさせている。 5.ドイツ・英国・アメリカ・韓国の研究者および国内研究者との研究交流により、比較社会学視点を取り入れた農家家族を取りまく社会文化環境と政策要因について討議の機会と関連の論文を寄稿頂いた。
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