研究概要 |
今年度も昨年度に引き続き,理論と応用の2つ面から研究を行った。 理論面においては,射影アノソフ流の接葉層構造を主に研究した.三松氏やエリアシュベルグ-サーストン氏らの研究により,射影アノソフ流で接葉層構造が分岐している例が構成されている.しかし,いずれの場合も分岐はアトラクタでのみ起きていた.そこで,アトラクタ以外で分岐が起きるかについて研究した.その結果,ω極限集合に強アトラクティング点が含まれていない場合,分岐が起こらないことを証明した.詳しくは,このような状況においては,グラフ変換が縮小的になることを示し,分岐が起こり得ないことを証明した.未だに,アトラクタ以外では分岐しないことを証明するにはいたっていないが,分岐点の特徴付けには成功した.現在は,射影流の鎖循環集合についての拡張を試みている. 一方,応用面においては,カオス水車について学生とともに研究した.いくつかのかごを持つ水車に上から水が落ちてきているという状況を考える.かごには穴があいているものとして,そこから絶えず水がもれている.このとき水車はカオス的に回転することがシミュレーションから予想されていた.そこで,数学的に検証してみたところ,いくつかの間題点が見つかった.そこで,既にカオス的であることが証明されているマルクスの水車との関係付けを試みた.マルクスの水車は,無限個の水車を持っているという点で,現実に存在しない.このため,雨が斜めから降っているという新しいモデルを考え,このモデルの水車を無限個に増やしたものがマルクスの水車になることを示した.
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