ニホンナシ新品種'秋栄'のみつ症発生抑制技術を検討するため、GAぺーストおよび新梢せん定処理を行い、果実品質ならびにみつ症の発生を調査した。GA処理により果肉細胞肥大が急激になり、果実の肥大・成熟とも促進された。さらにGA処理により極めて早い時期からみつ症が発生し、9月上旬にはほとんどの果実にきびしいみつ症発生が認められた。、また、GA処理の時期が早いほど果実肥大が優れておりみつ症発生も早期から始まった。一方、新梢せん定により細胞径の肥大がやや緩やかになったが、成熟期に近づくと対照区との間に細胞径並びに果重の差はみられなくなった。この間、糖組成、GA含量、エチレン生成については対照区との間に明らかな差は見られなかった。両年とも成熟期前半にあたる8月下旬の新梢せん定区の果実品質は、果肉硬度がやや高い他は対照区との間に差はみられず、みつ症発生は明らかに軽減された。 一方、みつ症発生の機構を解明するため、'秋栄''豊水'の生体膜の電解質漏出、果肉の総脂質含量、細胞壁成分を分析した。'私栄'果実の硬度はみつ症の程度が高いほど低く、その傾向偉果肉切片で明確であった。一方、果肉切片からの電解質漏出は両品種ともみつ症の程度が進行するほど高くなった。両品種とも総脂質含量はみつ症の程度が進むほど低くなったが、この傾向は'秋栄'で顕著であった。両品種の細胞壁成分を比較すると、'秋栄'ではEISがみつ症の進行に伴い低下したのに対し、'豊水'では変化がみられなかった。また'秋栄'においては健全部位とみつ症発生部位組織の間に全ペクチン含量の大きな差はなかったのに対し、'豊水'の全ペクチン含量は'秋栄'の約2倍程度であり、また障害程度の進行に伴って低下した。さらに、ヘミセルロースは両品種とも同程度であったが、'秋栄'においては4%KOH可溶性分画が高い含量であった。ヘミセルロースとセルロースのレベルは'秋栄'においてはみつ症の進行に伴い低下したが'豊水'では関連はみられなかった。
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