著者らが育成したニホンナシ新品種、'秋栄'、'瑞秋'、'真寿'の産地適応性にを評価し、その問題点を解決するための技術開発を行った。 供試3品種をマンシュウマメナシ、マメナシおよびニホンヤマナシの3台木を用い栽培したところ、いずれも良好な生育を示し、いずれも実用可能であった。次に、3品種の果実の貯蔵性とその原因をあきらかにするためエチレン生成量を調査したところ、エチレン生成量は'真寿'が最も高く、また貯蔵性がやや低いものと判断された。'秋栄'、'瑞秋'については'二十世紀'と同等の低いエチレン生成量であり、貯蔵性もきわめて優れていた。また、果実の糖蓄積とデンプンの推移並びに糖蓄積関連酵素を調査したところ、'秋栄'は成熟直前までデンプンが高いこと、高いスクロース含量を示すことが明らかであった。この原因は'秋栄'が高いスクロース合成酵素活性を示すことによるものであった。さらに、他の2品種はいずれもフルクトース含量が高いことが特徴的であった。 供試品種を福島、千葉、長野および鳥取で試作したところ、いずれも高い果実品質を示した。しかし、'秋栄'と'瑞秋'はいずれの産地においてもみつ症発生が顕著であった。そこで、'秋栄'のみつ症軽減技術開発を目的とした基礎研究を行った。'秋栄'のみつ症はGA処理によって増加すること、夏季の新梢せん定によって抑制されることが明らかであった。新梢せん定によって果実の品質に大きな影響はなく、実用的な技術であると判断される。またこの原因は、ホルモンレベルや細胞壁の老化・分解抑制とは関与しておらず、新梢せん定によって糖の過剰蓄積が防がれることにあると考えられた。
|