研究概要 |
歯周病における歯槽骨吸収活性を診断する目的として,歯肉溝滲出液(GCF)中に含まれる種々の骨代謝あるいはカルシウム代謝関連蛋白の同定と定量を行い,歯周炎の臨床病態との関連を追求した。オステオポンチン(OPN),オステオカルシン(OCN),カルプロテクチン(CPT),およびI型コラーゲンC末端プロペプチド(P1CP)の存在の有無を確認した後,それぞれの定量を行った。成人型歯周炎および健常者から研究内容の同意を得た後,GCFを採取するとともに,プロービングデプス(PD)および歯肉炎指数(GI)を検査した。PD 4mm以上を罹患部位,3mm以下を対照部位とした。イムノブロット分析の結果,GCF中にOPN,OCN,CPT,P1CPがいずれも存在し,その分解産物もSDS-PAGEゲル上で認められた。ELISA分析の結果,GCF中のOPN量およびOCN量は罹患部位における総量が対照群と比較して有意に高かった。しかしながら,総量とPDとの相関,あるいはGIとの相関は統計学的に認められなかった。一方,CPTやP1CPでは同様に炎症の程度と関連して総量が増加するとともに,臨床指標との正の相関が認められた。以上より,歯周炎によってGCF中に存在する骨代謝あるいはカルシウム代謝関連蛋白が増量し,歯槽骨を含む歯周組織破壊の指標実現のための基礎データが得られた。今後,臨床指標との関連をさらに詳細に把握することによって,GCF中のOPN,OCN,CPT,P1CPの相互関係や生理的役割について検索していく必要がある。
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