研究概要 |
Eysonckの性格理論に従って生理的反応(自律神経系の反応、脳波、誘発電位など)を計測した(生理心理学的)研究では、周知のように、その予測を支持する結果、支持しない結果、互いに矛盾する結果が大量に残されただけであった。当研究の目的は、そうなっている原因を、比較的新しい方法論であるERP,(脳事象関連電位)を用いた実験と考察によって、明らかにすることであった。本研究の結果,外向性群(外向性得点の高い者)では、問題なく、信頼のおけるデータを得ることができるが、内向性群(内向性者の高い)では、その性格そのものが性格実験と交互作用するために、信頼できるデータを得ることは、ほとんど不可能なほど難しいことが、判明した。例えば、被験者の自由意志による性格検査への参加の拒否-筆者らの経験力は、内向性者の方が、外向性者よりもかなりの確率で多い-。このため、内向性群のデータには、母集団のそれからある歪を持ったデータしか得られていない可能性がいつも付きまとう。また、内向性群では、(本研究で明らかにしたように)、神経症的傾向得点の高低、事象関連電位測定時の時刻などで、データが変動することも明かとなった。このことは、内向性者が例え実験に参加しても、その性格が実験状況とも交互作用することを示唆している。これが内向性という性格特性である以上、我々実験者は、この問題を避ける方法は与えられておらず、データを評価する時にその点に十分に留意することしかできないようである。また、性格と遺伝子の多型性との関連性に関する研究についても、同様の観点から考察を加えた。
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