研究概要 |
コミュニケーション行動における共同注意(Joint Attention)については、Premack(1978),Baron-Cohen(1995)の「心の理論」やButterworth(1986),Tomasello(1995)の「共同注意」の概念がある。これらの研究理論や研究方法を参考として、重度・重複障害児の指導場面における子どもと教師の相互交渉形成について評価してきた。具体的には、肢体不自由又は知的障害を主とする重度・重複障害児の指導場面の分析を通して、コミュニケーション行動における共同注意や対人行動の発達水準について検討してきた。この成果として、「自発的な動きの乏しい重度・重複障害児の対人的相互交渉の成立について」をテーマとした論文が、特殊教育学研究,38(5),45-51,2001に掲載された。 これらの事例研究を手がかりに、重度・重複障害児の行動形成について、「重度・重複障害児の対人的行動からみた主観的社会体験の様相について-身体接触を伴う働きかけへの応答行動の分析から-」と「Approach to Establish the Interactions between Caregiver and Child with Profound and Multiple Disabilities-Based on Japanese Psychological Rehabilitation (Dohsa-Hou)-」として、論文にまとめ、投稿中である。 事例研究や文献研究を通して、乳児の発達モデルを手がかりに、重度・重複障害のある子どもが、子ども自身を取り巻く環境について、他者について、さらには自己についての理解を、どのような過程をたどりながら形成していかのモデルを検討中である。第1段階は、(1)刺激につながりのある行為システムの段階(乳児の2ヶ月以前)、(2)意図性や随意性が生じ自己と他者が区別される段階(4,5ヶ月)、(3)他者の意図に気づき、予期を伴い、応答的な行動が可能になる段階(9ヶ月頃)、(4)他者と共同注意を形成し、他者と共同して活動可能になる段階(12ヶ月以降)を想定している。今後は、このモデルの妥当性について、事例や文献研究を含め、論理的に吟味していくことが課題となる。
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