研究概要 |
コミュニケーション行動における共同注意(Joint Attention)については、Premack(1978),Baron-Cohen(1995)の「心の理論」やButterworth(1986),Tomasello(1995)の「共同注意」の概念がある。これらの研究理論や研究方法を参考として、重度・重複障害児の指導場面における子どもと教師の相互交渉形成について評価してきた。具体的には、肢体不自由又は知的障害を主とする重度・重複障害児の指導場面の分析を通して、コミュニケーション行動における共同注意や対人行動の発達水準について検討してきた。 本年度は、報告書作成のための文献研究、事例研究のまとめが大きな課題であった。これらの研究を手がかりに、重度・重複障害のある子どもが、子ども自身を取り巻く環境について、対象物について、他者について、さらには自己についての理解を、どのような過程をたどりながら形成していかのモデルを検討した。12月に九州大学で開催された発達コロキウムでは、Rochat, P.氏による「乳児の自己理解、他者理解」において、貴重な示唆を得た。 その情報を加えて、第1段階は、(1)刺激につながりのある行為システムの段階(乳児の2ヶ月以前)、(2)意図性や随意性が生じ自己と他者が区別される段階(4,5ヶ月)、(3)他者の意図に気づき、予期を伴い、応答的な行動が可能になる段階(9ヶ月頃)、(4)他者と共同注意を形成し、他者と共同して活動可能になる段階(12ヶ月以降)をもとに、これらの前後でさらに3段階を想定して、7段階のモデルを考察した。今後は、このモデルの妥当性について、事例や文献研究を含め、論理的に吟味していくことが課題となった。
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