1.元禄竹島一件にかかわる史料調査について。国立公文書館所蔵の竹島一件関係資料集『竹島紀事』の写真撮影・焼き付けを依頼し、その内容分析に着手した。その分析とかかわって、鳥取県立博物館所蔵の鳥取藩政史料、長崎県立対馬歴史民俗資料館所蔵の対馬藩政史料の史料収集を行った。これまでに元禄6〜9年にかけての主として対馬藩・徳川幕府側の動向分析を終え、論文を執筆した(研究発表欄参照)。 2.日朝間の漂流・漂着事件に関わっては、長崎県立対馬歴史民俗資料館で史料調査を行い、また五島列島への漂着事件について論文を執筆した(研究発表欄参照)。 3.近世日朝間の漂流・漂着問題および竹島一件に造詣の深い韓国人研究者と会い、意見交換を行い、また助言を得た。 4.越境行為を介した近世の日朝相互認識と対比するために、近代以後に朝鮮半島が植民地化され日本の領土に組み込まれて以後(すなわち「境界の消滅」以後)の日本人の朝鮮認識を分析する素材を収集するよう務めた。そのため国立国会図書館で関連する文献・新聞史料等の収集に務めた。 5.以上を踏まえ、次年度には次のような作業を進めることとしたい。まず、元禄竹島一件に関わっては、元禄10年以後の動向について分析を進める。その際に、朝鮮王朝側の動きにも配慮する。さらに、天保期の竹島一件についても見通しを得たい。そうした作業を進める前提として、『竹島紀事』の翻刻・校訂作業を進める。ついで、近世日朝間の漂流・漂着事件にかかわっては、長崎県立対馬歴史民俗資料館所蔵の対馬藩政史料や大韓民国国史編纂委員会発行の『各司謄録』等に拠りながら、主として積み荷の分析を行って、非合法的な越境行為(密貿易)の可能性について検討する。
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