わが国の高等教育は今日、激動期を迎えている。特に法学教育は、日本型ロースクール構想も示される中でその全体的見直しが迫られている。法制史教育も例外ではない。研究目的は、法学教育における法制史の存在価値を現下の学問状況の中で問い直し、21世紀の日本における法の歴史教育の意義とあり方を究明することである。 1.計画の第一は、わが国で西洋法制史のみを専門研究分野とした初めての研究者・栗生武夫を取りあげ、彼が法制史教育にいかなる意義を見出していたかを明らかにすることであった。研究発表記載『阪大法学』に論文を掲載できた。 2.栗生が法政史教育の意義を深刻に考えるきっかけになったのがワイマール時代のドイツに留学したことである。当時のドイツでは、法学教育をより実際的にしようとする改革が激しく進行していて、実用に縁遠い法制史教育は厳しい批判にさらされていた。計画の第二は、栗生のこの体験を追体験することであった。平成11年8月26日から9月10日までマールブルグ大学図書館で、議会議事録など資料の探索にあたった。栗生は出典を示さずにドイツの情報を伝えているため探索は難航したが、資料収集の点で少なからぬ成果があった。 3.法制史教育の意義について、先輩の法制史学者から聞き取りをすることが第三の計画であった。今年度は二人の方から聞き取りができた。次年度には、活字にして公表したい。 4.日本学術会議50周年記念シンポジウム「変動する法学教育と基礎法学の役割」(平成11年12月18日、関西大学で開催)で報告した。テーマは「法における歴史と現代の法学教育」。加筆修正された報告原稿が、研究発表記載『法律時報』(2000年4月号。校正は終了している)に掲載予定。
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