昨年度、研究課題であるドイツの行政改革研究を進める中で、国・自治体双方のレヴェルで、ニュー・パブリック・マネージメント(NPM)と呼ばれる公共(行政)管理の「現代化」が進行していることが確認できた(ドイツでは、「新制御モデル」(das neue Steuerungsmodell)と呼ばれる。略称NSM)。今年度は、さらにドイツにおける行政改革の現況を視察し、行政現場および研究所などでヒアリングを行うなど、国・自治体レヴェルの実態調査を実施し、研究を深めることができた。とくに注目すべきは、第一に、連邦レヴェルにおいて、これまでの「スリムな国家」論に代わって、「現代国家-現代行政」("Moderner Staat-Moderne Verwaltung")の連邦政府プログラムが開始されたことである。旧福祉国家から距離を置く「スリムな国家」への転換をさらに一歩進めた、連邦レヴェルでのNPMの新展開といえる。第二に、都市における行政改革の典型を示すベルリン行政改革が急速な展開を見せており、ここでもNPM理論の影響が大きいことが看取できる。いずれにしても、NSM論、「スリムな国家」論および「現代国家-現代行政」論は、NPM理論抜きで語れない。しかし同時に、市場原理、競争原理と深く結びつくNPM理論には、行政法学における法治主義論、民主主義論、公私の役割分担論、政治と行政との関係論など、なお検討すべき論点が多い。第三に、わが国では、中央省庁等再編および地方分権改革が実施段階に入ったが、NPMの視点から見ると、わが国の行政改革においても、NPM理論の影響が無視できないことが判明した。今後も、国・自治体のレヴェルでのNPMの具体化を注視したい。
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