彼我の国において、国・自治体双方のレヴェルで、ニュー・パブリック・マネージメント(NPM)と呼ばれる公共(行政)管理の「現代化」が進行していることが確認できた(ドイツでは、「新制御モデル」(das neue Steuerungsmodell)と呼ばれる。略称NSM)。NPMにおける公共管理の「現代化」のグローバルトレンドは、概ね「契約モデル」(成果管理型(MbR)ガバナンス)、「顧客選択モデル」(市場ガバナンス)および「市民主導型モデル」(市民社会ガバナンス)に分類される。同様に、国と地方自治体との関係の改革も、国による直接誘導型からマルチガバナンス的状況対応型へと変化を見せている。このようなNPMを最終的にどのように評価するかはなおも今後の研究課題であるが、公行政の効率性と実効性の改善に向けた持続可能な改革傾向であることは確認できる。最近のドイツの新傾向は、第一に、「現代国家-現代行政」("Moderner Staat-Moderne Verwaltung")の連邦政府プログラムが開始されたことである。旧福祉国家から距離を置く「スリムな国家」への転換をさらに一歩進めた、連邦レヴェルでのNPMの新展開といえる。第二に、都市における行政改革の典型を示すベルリン行政改革が急速な展開を見せており、ここでもNPM理論の影響が大きいことが看取できる。NSM論、「スリムな国家」論および「現代国家-現代行政」論は、まさにNPM理論のドイツ版である。わが国でも、中央省庁等再編および地方分権改革が実施段階に入ったが、NPMの視点から見ると、NPM理論の影響が無視できないこと明白である。しかし同時に、市場原理、競争原理と深く結びつくNPM理論には、行政法学における法治主義論、民主主義論、公私の役割分担論、政治と行政との関係論など、なお検討すべき論点も多い。たとえば、NPMの具体的手法である行政評価についていえば、「法律による行政」にとって代わるかのごとき「目的による管理」は、政治・立法と行政との関係を革命的に変化させ、行政の民主的統制のあり方を根本的に問うことになろう。
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