研究概要 |
本研究の目的は生活の単位である世帯の多様化という視点から生活リスクに備えるべき社会保障の機能を再検討することであり,今年度は主に以下の2つの課題についての研究成果を得た。 第1に、コーホート別にみた世帯をめぐる構造変化については以下の結果を得た。 1 コーホートを追跡すると,女性の労働力参加の上昇により就業者数はほぼ50歳に至るまで増加を続ける。職業別に見ると,新しいコーホートでは専門的・技術的職業従事者の占める比率が高く,30歳代に入っても増加することから,産業構造の変化にともなう職種の転換が顕著に見られるが,40歳代に入ると減少が目立ち職種の転換の困難さを確認できた。 2 少子化の原因として,女性コーホートの有配偶率と第1子累積出生率を検討したところ,第1子を持つ割合はコーホート間に大きな差はなく,有配偶率自身が戦後生れに限っても29歳時点で30%も下がっていることが大きいことが明らかになった。 第2に、マクロの数値ではなく,世帯の属性別に所得構造,社会保障の負担構造,および消費構造の日,米,英,独の4ヶ国による国際比較を行うことにより以下の結果を得た。 3 税,および社会保障負担に関して日本はアメリカに近い構造を持っているが,同居が比較的多い日本では世帯主の年齢によって負担率や所得構造を比較すると豊かなイメージに偏りすぎることが確認できた。 4 所得格差と社会保障水準の比較から高水準の給付を実現するには所得格差の小さい社会が条件となる傾向が見られた。
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