研究概要 |
前年度に引き続き3変数の反応-拡散方程式系の進行波解の諸性質について考察した.最初の2変数に時定数を導入し,時定数を小さくすることによって,進行波解の枝にヒステリシスが生じ,進行波解が多重に存在することを示し,それらの安定性も調べた.さらにパルス定常解に関しても,次定数を小さくしていくと,安定から不安定に変化することを示した.これには,2つのタイプの不安定化があり,一つは実固有値が負から正に変化する静的分岐であり,もう一つは2つの共役な複素固有値が虚軸を横切る動的分岐(Hopf分岐)である.しかし,どちらの分岐が最初に起こるかは,厳密には示せていない,数値計算によると静的分岐が先に起こり,安定なパルス進行波解が分岐しているようである.さらに,空間2次元領域(無限に長い長方形領域)における1次元進行波解の安定性についても考察した.ある条件が満たされている時は1次元進行波解は安定であるが,その条件が破れると不安定化し,その結果界面は複雑な形状を取る.また,上記で示した安定な1次元進行波解が両側から衝突するとどうなるかについても考察した.界面の挙動を記述する方程式に関しては現在考察中である.上記の数学的結果と実際の生態学における現象の関係については今後の課題である.複雑な界面の動きに関する数値シュミレーションを行い,購入したノートパソコンに動画ファイルとして保存し,それをもとに多くの研究集会の機会を利用して内外の研究者と意見交換を行った.
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