研究概要 |
本研究は無限行列A=[aij]の固有値問題をAのn次切断行列An(Aのn次主座小行列 n=1,2,・・・)の固有値問題でどんな意味で近似できるか、近似誤差はnのどんな関数になるのか、特にn→∞の場合の挙動は何か、についての調査を以下の設定のもとに行った: (1)Aの定義域も値域もそれぞれヒルベルト空間l^2の部分空間、 (2)Aは複素対称(これはAの自己随伴性、すなわちA*=A,*=共役転置、を必ずしも意味しない) (3)AまたはA^<-1>はコンパクト、 この設定のもとに得られた一般的定理(下記論文参照)の本格的応用を目指した.すなわち(1)ν階ベッセル関数Jν(z)の零点(z,ν)を、従来から知られているνを実数として与える問題と、その「逆問題」を解くことにより、複素領域において3次元可視化し、調査した. (2)zJ'ν(z)+HJν(z)=0,ここHは与えられた複素数、「'」はzに関する微分、のν-Z曲線を複素領域で追跡する.この方程式はよく知られた古典的境界値問題に現れるものである.従来はH,νを実数として与え、zを求める問題の考察が主流であったが、本研究では複素領域において、上の「順問題」のみならず「逆問題」、すなわち、H,zを与えてνを求める問題をも考察の対象とし、その解の挙動を可視化し、調査した.さらに(3)マシュー微分方程式の固有値の挙動を複素領域において可視化し、調査した. 本方法の特徴は: 1.近似固有値により固有値を任意の精度で近似することができる。 2.近似固有値の(真値に対する)漸近的な誤差評価を得ることができる。 3.実あるいは複素固有値を同一の(つまり別々に用意せずに)解法により求めることができる。 4.アルゴリズムの構造がシンプルなため、計算機への実装が極めて容易である。 さらに、本研究では誤差評価式も含め、行列固有値解法を示した3問題(特殊関数零点計算問題または固有値計算問題)を紹介する: a 正則クーロン波動関数 及びその一階導関数F0 b Mathieu微分方程式の逆固有値問題, c spheroid微分方程式の順および逆固有値問題.
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