研究概要 |
1.反応拡散系にたいする界面方程式の漸近展開,および,ダイナミクスの階層的な構造について: 界面方程式をアトラクタ上のダイナミクスと関係つけて考察するという研究は、従来ほとんどなされていなかった。無限次元力学系の視点から、反応拡散系の解の漸近ダイナミクスと界面ダイナミクスの両方を視野にいれながら、両者の関係性をさらに深く議論するために、従来あまり力点が置かれていなかった界面方程式の導出過程を、詳細な漸近展開解析によって精密化した。この結果、界面方程式とは、ある種の適合条件に他ならないことが明らかとなり、そこから、元の反応拡散系との関係も自然な形で結びつくことが鮮明に浮かび上がってきた。実際、この方法によると、広い意味での比較原理などが適用できない状況においても、界面方程式の正当性が証明できる。さらに、ひとつの反応拡散系に対しても、様々な時間スケールが混在していることが多々あるが、そのような場合、複数の界面方程式が導出され、それぞれ、別々の時間スケールにおける遷移層の運動を記述していること、すなわち、ダイナミクスの階層的構造の所在、を究明した. 2.境界と交わる内部遷移層: 反応拡散系の最も基本的なAllen-Cahn方程式に対して、境界と交わる内部遷移層解,所謂,内部境界層の存在を示した。さらに、境界の幾何学的な情報が、この解の安定性に深く関わっていることも明らかにした。実際,境界と内部層が交わる部分において,境界の平均曲率が負(境界が凹んでいる)ならば,解は漸近安定,正(境界が凸っている)ならば不安定であることが明らかになった.さらに,不安定な場合においても,境界がその曲率円の内部にある場合と外部にある場合で,不安定度に違いがあることも究明した.このような結果は,従来の変分法的手法や,界面方程式だけでは得られないと推測され,我々の精密な解析法の威力を示している.
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