研究概要 |
1.無限に続く微細構造の分岐.活性因子・抑制因子型の反応拡散系に対して,多次元空間における球対称遷移層解の存在を示した.更に,活性化因子の為す層の厚さが零に行くとき,微細構造を持つ非球対称な遷移層解が無限個の厚さに於いて分岐することを示した.このことは,空間1次元の場合には決して起こることが無く,多次元空間における反応拡散系の解構造の複雑性を如実に物語っている.また,ここで得られた解は全て不安定であり,物理的には実現し得ない物であるが,相空間内で起こるダイナミクスの複雑性の起源を追求する際に,非常に重要である.また,分岐した非球対称遷移層解の層の厚さと,その解の界面に沿った特徴的な波長との間には,「二分の一乗則」と呼ばれる関係があることを明らかにした.これは,従来知られていた,最不安定モードの波長と層の間にある「三分の一乗則」とは違っていることを示した.この違いの根元を探ることによって,「安定パターンがどのようなメカニズムで不安定化し複雑なパターンを生み出すのか」に対する一つの視点を示唆する結果を得た.. 2.非局所項を持つ界面方程式.反応拡散系の特異極限として,平均曲率と非局所項を併せ持つ界面方程式を導出し,その適切性(時間局所解の存在と一意性)を証明した.さらに,幾何学的に単純な形状を持つ領域に於いて,この界面方程式の平衡解の存在を示した.この界面方程式の平衡解に,もとの反応拡散系の遷移層を持つ平衡解が,安定性も込めて対応することを確立した. 3.幾何学的変分問題と界面方程式.バランスの取れた反応項を持つ反応拡散系の界面方程式が,幾何学的な変分問題の勾配系として得られることを示した.
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