研究概要 |
リーマン多様体上の古典力学系の構造と対応する量子力学系(シュレディンガー作用素)のスペクトルの性質との関係を考察し,以下の成果を得た. リーマン多様体(M,g)上の磁場Θとは,微分幾何学的にはM上の閉2次微分形式と見なすことができ,磁場における(古典的)荷電粒子の運動は,Θによって変形されたシンプレクティック構造に関するハミルトン力学系H_cによって記述することができる.一方,微分形式Θから自然に,M上の複素直線束Eおよびその上の接続が定義され,さらに,E上の断面の空間に作用するラプラシアンH_qが定義される.これを磁場における量子力学系のシュレディンガー作用素と見なすことにする.以上の定式化の下で, 1.コンパクトなMの場合に,H_qの任意の2つの固有値の差の集合の集積点の全体(difference spectrumと呼ぶ)の構造が,Mの閉測地線の分布状況,および接続のホロノミーの値の分布状況で特徴付けられることを明らかにした.これは,ラプラス-ベルトラミ作用素の場合のヘルトンの定理の拡張に当たる.磁場のある場合には、difference spectrumがバンド構造を持つことがあることが明らかになった. 2.磁場における古典力学系H_cに対して量子化条件を考察し,それによって定まる(半古典)エネルギー分布と対応するH_qのスペクトルの関係を,フーリエ積分作用素の理論に基づいて明らかにした.
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