本年度は、(1)斜め入射偏光電場変調分光(EA)法の開発、(2)光誘起構造乱れの評価、および(3)光誘起内部歪み・密度変化の評価、の三項目について研究を行った。(1)においては、デバイス級a-Si:Hからなるp-i-n接合構造を対象とした"光透過配置"ならびに"光反射配置"について計測系ならびに解析手法を確立した。測定の容易な光透過配置を採用して、研究計画項目(2)に即して、光照射に伴うa-Si:Hの偏光EA特性の変化を詳細に調べた。その結果、光照射によって偏光EAのニ成分である等方性と異方性信号の強度比が変化すること、すなわち、ネットワ-ク構造乱れが増大することが確認され、従来のコプラナー電極配置を用いた観測結果の正当性を証明することができた。また、研究計画項目(3)では、光学的変位計測と浮遊法を導入して、光照射により、巨視的な歪みが増大し、体積膨張(密度減少)が生じることを見いだした。上記の光誘起現象はすべて熱処理によって回復する可逆過程であることが明らかになり、さらに、光照射過程では、非熱平衡欠陥生成に先駆けて生じることから、a-Si:Hの光劣化におけるプリカーサー的物理現象であることが示唆された。観測された光誘起構造変化現象の光照射時ダイナミックスを詳細に検討することによって、構造乱れの増大→構造歪み蓄積(体積膨張)→欠陥生成、なる光誘起プロセスの定量的モデルを構築することができた。
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