1.平成11年度と同様に、限外濾過膜には分画分子量50000のポリサルフォン系限外濾過膜を使用した。 2.昨年度においては、限外濾過膜のゼータ電位を自製の装置を用いて電気浸透流量法によって測定したが、膜の開孔面積(空隙率)を知る必要があったために、現有の原子間力顕微鏡で測定解析した結果を用いてゼータ電位の算出を行った。本測定解析結果の信頼性を確認するために、今年度は同装置を使用して流動電位法による測定を行った。その結果、得られたゼータ電位の値は、昨年度と同様に、pHの測定範囲で負の極性を示し、アルカリ側になると急激にその絶対値は大きくなることがわかった。また、電気浸透法と流動電位法による両測定結果はほぼ一致することがわかった。したがって、限外濾過膜のゼータ電位のpH依存性の評価は妥当であることが明らかになった。 3.アクリル樹脂製の回分式電気限外濾過装置の製作を行った。本装置は、電極材料に電極の溶解や汚染の影響を防止するために白金板を使用し、電極の間には2枚の限外濾過膜を設置することができ、膜の片側だけに、あるいは両側にも濾過できる構造のものである。したがって、電場の極性を変えたときの電気限外濾過特性についても実験的検討を行うことができる。また、両電極室の洗浄およびガス抜きもできるようになっている。 4.試作した上記電気限外濾過装置を用いて一定圧力の下で牛血清アルブミン溶液の電気限外濾過実験を試みた。膜の片側の一方方向に濾過するように電場を定電圧条件で印加し、限外濾過だけの場合と電気限外濾過の場合を比べた所、電場を加えることによって濾過流束は増大することが明らかになり、本作製装置で電気限外濾過実験を実施できることを確認した。しかし、電場印加条件やタンパク質の種類、溶液のpHを変えたときの十分な実験を行うまでには至らず、電気限外濾過特性に及ぼすゼータ電位の影響については次年度に詳細に検討したい。
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