研究概要 |
1.タンパク質試料としては牛血清アルブミン(分子量:67,000、等電点pH4.8)を主に使用し、平成12年度に製作した回分式の電気限外濾過装置内に分画分子量が50,000の限外濾過膜を設置し、pH既知のタンパク質溶液を濾過器内に供給してから、窒素ガスボンベを用いて一定圧力条件の下で限外濾過実験を行うと同時に定電圧操作下で電場を印加して電気限外濾過実験を行った。濾液量の経時変化は電子天秤によって自動測定し、また、濾過膜の見かけの阻止率を求めるために濾液中のタンパク溶質濃度を分光光度計で測定した。 2.上記のような濾過実験を、試料溶液のpH、印加電圧、電場の印加方法を変えて行い、濾過速度や溶質の阻止率に対するこれらの操作条件の影響について調べることによって電気限外濾過特性について検討した。 3.直流電場において、試料溶液のpHが一定のときは印加電圧が増加するとともに膜の透過流束すなわち濾過流速は増大した。このような結果は、印加電圧が大きくなると溶質分子の電荷、すなわちゼータ電位に起因する電気泳動度が大きくなるため、濾過抵抗となる膜面に形成されるゲル状ケーク層が抑制されるためであると考えられる。しかし、等電点のpHにおいては溶質分子のゼータ電位がほとんど0となるために濾過流速は電場を加えてもほとんど変化しないことを確認した。 4.電極の極性を10分問隔で切り替えた交流電場にについて検討したところ、周期的に直流電場とほぼ同じ濾過流速に維持されることが明らかになったが、時間の経過とともに次第に減少する傾向が示された。また、断続的電場では特に顕著な有効性を示す結果は得られなかった。 5.溶質の見かけの阻止率は、電場を印加しない場合はpHによって濾過初期に差異があったが、時間の経過とともに約85%の一定の限界値に達した。この値は電場の有無にはほとんど依存しなかった。
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