研究概要 |
本研究では特に近年国内で行われている活断層探査を念頭において,難地域である断層帯での地震波散乱特性の検出を試み,その特性を調べることから地震探査データ解析や解釈法について検討して難地域における探査手法開発の手始めにすることを目的としてきた.その中で,研究は地震探査実験の実施および地震計アレイ観測による散乱波検出の研究を柱として進めてきた. 地震探査は1896年陸羽地震の際に現れた地表断層(千屋断層系)があり,このうち断層露頭が観察できる太田断層において実施した.この実験では人工震源を用いて,反射法,屈折法解析のためのデータを収録した.探査記録上では地震断層から到来したと考えられる顕著な反射波が見られ,その形状は少なくとも深さ数百メートルまで続いていることが明らかにった.地表露頭のある断層のほかに4つの断層が存在していることが示された.さらに,この反射波から短波長の不均質が断層面で存在していることがわかった. 一方,地殻内部が実際にどのような散乱体分布を持っているか調べることは,地震探査処理に寄与する散乱波の特性を知る上で不可欠である.1998年に行われた東北脊梁地域における人工地震のアレイ観測波形解析から,およそ50km四方に分布する散乱体の検出を行った.これによると散乱体は千屋断層系の深部延長約12kmまで達しており,先の地震探査実験で得られた浅部構造に加えて深部で散乱波が励起されることが明らかになった.また,高地震活動域,火山直下などでも強い散乱体が多く分布していることがわかった.また,波形包絡線解析から地殻中にランダムな分布をする散乱体からの散乱波が人工地震記録中に大きな影響をもつことが示された.さらに,地震もしくは火山活動によってこれらの影響が時間的に変化することを示した.
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