研究概要 |
「幼生飼育」 (1)ハナサキガニの孵化・幼生期は2、4月であるが、過去2ヵ年に亘り中腸腺白濁症の発生のために十分な尾数を生産することができなかった。本年度は健全な幼生を飼育するために,胞卵個体を孵化2週間前に塩酸オキシテトラサイクリン5ppmで薬浴処理し,また幼生飼育水の珪藻濃度を約10,000cells/mlに維持し,適宜換水を行った。その結果,良好な餌料条件においてはゾエア期の死亡率を約35%以下に改善することができた。 (2)珪藻を適正な濃度に維持するためには換水が必要であるが、毎日換水した場合の生残率は対照区の約1/2に低下した。ゾエアに対する水温変化の負の影響を実験中である。 (3)珪藻はArtemiaと併用した場合栄養的に極めて優れているが,常用のThalassiosira nordenskioeldiiは群体を形成するため沈降しやすく、それが水質の悪化と病気の発生を惹起していると考えられる。沈降しにくい単細胞タイプのThalassiosira sp.を地先海水から探索中である。 (4)脂質分析結果では,T.nordenskioeldiiは多量のEPA(脂肪酸の約20%)を含むDHAを殆ど含まない。凍結乾燥したT.nordenskioeldiiにその脂質の約30%に相当するDHA(日本脂質(株)製サンオメガDHA)を添加し、直接あるいはArtemiaに摂取させた後ゾエアに与え、DHAの効果を実験中である。「グロコトエ飼育」育成した健苗約3,000尾を水深約80cmのFRP水槽(容積2ton)に収容した。グロコトエは室内の照度(約2,000lux)で表面近くを遊泳し,化繊網(60メッシュ)または糸に好んで着生した。化繊網を表層、中層および低層に垂下した場合のグロコトエの着生尾数はほぼ5:2:1であった。「稚ガニ飼育」1999年5月1齢に脱皮した稚ガニを個別(1尾/0.01m^2)および集団(200尾/0.7m^2)で11月まで飼育した。前者は一様に8齢になったが、後者は3-9齢の範囲に分布した。
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